知識は旅をする 千葉県立東部図書館だより 通号78号 2023年10月発行 テキスト版 【1ページ】   {図} 『浅倉一代記 十番渡場』(一勇斎 国芳/画(「菜の花ライブラリー」千葉県デジタルアーカイブ)) {図終わり} ▼ガラス展示コーナーのご案内 テーマ:「千葉県誕生150周年」 展示期間:9月5日~11月23日 展示場所:ガラス展示コーナー(入口すぐ左、休憩コーナー手前) 千葉県誕生から 150年。明治から続く県の歴史を、知事の著書や伝記、写真や絵図を通じて振り返ってみてはいかがでしょうか。 また、150周年記念に伴い「房総文学カード」の配布やパネル巡回展「写真で見るちばのあゆみ」も同時開催しています。 ▼ 資料紹介コーナーのご案内 テーマ:「本で世界を旅しよう」 展示期間:10月21日 ~ 12月14日 展示場所:資料紹介コーナー(正面奥の壁面書庫) 10月27日~11月9日は読書週間です。本で世界を巡る旅に出かけてみませんか? 世界遺産や遺跡の写真集、紀行文学、幕末・明治に日本を旅した外国人の著作など、旅行気分が満喫できる本を取り揃えています。 ▼ 利用者アンケートにご協力ください 今年も読書週間(10月27日~11月9日)に利用者アンケートを実施します。今後の運営の参考にさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。 アンケートの集計結果は「知識は旅をする 第79号」(2月発行予定)に掲載いたします。また、図書館内の壁面にも掲示しますので、ご覧ください。 ▼ 休館のお知らせ 年末年始休館:12月29日(金)~1月 4日(木) 蔵書点検休館: 2月13日(火)~2月22日(木) 休館中でも資料の返却ができます。東部図書館正面入口、左側のブックポストをご利用ください。 千葉県立図書館WebサイトPC・スマホ{QRコード} 千葉県立図書館Webサイト携帯電話{QRコード} 千葉県立図書館Twitter{QRコード} 【2ページ】 東部図書館で実施した県民向け講座のご紹介 千葉県立図書館は、一般の利用者を対象とした県民向け講座を定期的に開催しています。東部図書館では、毎年恒例の文学講座・歴史講座・シニア向け「はつらつライフ講座」に、今年新たに「音読教室」が加わりました。上半期に行われた講座の様子をお伝えします。 文学講座 光太郎・智恵子と房総 実施:令和5年6月24日(土) 彫刻家・詩人として多くの作品を残し、今なお愛される高村光太郎と、その妻・智恵子。講師に高村光太郎連翹忌運営委員会代表 小山弘明氏をお迎えし、光太郎の顕彰活動で全国各地を回っておられる先生ならではの、細やかで濃い解説をたっぷりと伺いました。 前半は光太郎の人生と業績の紹介。「“二刀流”以上の才能を発揮した総合芸術家」「父・光雲との微妙な関係」「戦後の隠遁生活」などのお話に、参加者の皆さんは聞き入っていました。 後半は二人と房総の関わりについて、現地に取材した豊富な写真を交えて。「智恵子が光太郎を追いかけて来た銚子・暁鶏館」「光太郎の親友が住んでいた成田・三里塚」「精神を病んだ智恵子が療養した九十九里」など、東部図書館のある旭市近辺の土地が光太郎・智恵子の人生の重要な一部になっており、地元からの参加者も「(二人と)同じ景色を見ていると思うと身近に感じました」と感想を寄せてくれました。 先生のユーモアのある語り口にしばしば笑いも起き、質疑応答も非常に盛り上がりました。「光太郎について更に勉強したいと思った」という声も上がる、充実した半日でした。 シニアのためのはつらつ音読講座 実施:令和5年6月30日(金) 「小説や詩などを声に出して読むことで、脳みそを刺激し、心身ともに健康になろう」というコンセプトで始まった講座です。口周りや肩の簡単なストレッチのあと、定番の「あめんぼあかいなあいうえお(北原白秋「五十音」)」や早口言葉などでウォーミングアップ。季節の俳句・短歌・漢詩、そして生誕 140 周年ということで文学講座のテーマにもなった高村光太郎の詩「道程」「レモン哀歌」を、ひとつずつ音読していきました。 参加者の皆さんはとても意欲的で、出だしから大きな声がぴったり揃い、まさに元気はつらつ。難しい箇所を思い思いに復唱したり、隣り合った方と談笑したり、休憩時間に会場内に展示された関連本を手に取ったりと、リラックスして楽しんでいる様子がうかがえました。「また来たい」との声も多くいただきました。 音読教室は、おおよそ季節に一度のペースで開催していく予定です(第2回は10月26日)。参加者の皆さんのご意見を反映してよりよい講座にして参ります。テキストだけ使いたいという方も大歓迎ですので、お問い合わせください。 講座の最新情報は県立図書館WEBサイトやX(旧twitter)にてご確認ください。 【3ページ】 図書館ぶらり散歩58 宮沢賢治 宮沢賢治は多くの詩や童話を創作し、今もなお、世界中で愛されています。2023 年は没後90年の年です。賢治の世界に触れてみてはいかがでしょうか? 『宮沢賢治の心を読む(Ⅰ)』草山万兎著 童話屋 2011年 [91026/ミケ183/1] 宮沢賢治の童話を読んで「難しいな?」「これは、どういうことかな?」と思った人もいるのではないでしょうか。この本は、宮沢賢治の書いた4つの童話について、草山氏がわかりやすい言葉で解説してくれています。はじめての話でも、読んでから草山氏の解説を読むと「そういうことなのか!」と賢治の思いを感じることができます。『宮沢賢治の心を読む』は(1)~(4)まで発刊されています。宮沢賢治がどのような思いでこの話を書いたのか……。その心に触れてみませんか? 『宮沢賢治のオノマトペ集』宮沢賢治著 筑摩書房 2014年[91026/ミケ209] 宮沢賢治の作品では「ポシャポシャ降る霧」や「クラムボンはかぷかぷわらったよ」など、オノマトペ(擬音・擬態語)がよく使われていることを知っていますか。本書では、数ある宮沢賢治の作品の中から、童話で使われている特におもしろいオノマトペを「気象」「光」「歩く・踊る」などの章に分けて紹介しています。 右ページにはイラストレーターの尾崎仁美さんがそれぞれのオノマトペのイメージを手書き文字で表現しており、左ページには引用した文章と解説が書かれています。文字を見ているだけでも楽しい一冊です。 『宮沢賢治大事典』渡部芳紀編 勉誠出版 2007年 [91026/ミケ146] 参考図書を知っていますか?事典や図鑑、年鑑などで調べ物をしたいけど、どこから手を付けていいかわからないというときに使うと便利な本です。本書は、執筆時期や内容、評価、参考文献、キーワードなど、賢治の研究をする上で欠かせない項目が網羅されています。当館では「賢治が描いた『月夜のでんしんばしら』の水彩画が見たい」というレファレンスの調べ物などで活用しました。なお、参考図書のご利用は館内のみとなっており、館外貸出はできないのでお気を付けください。 『宮沢賢治の菜食思想』鶴田 静著 晶文社 2013年 [91026/ミケ 194] 「私は春から生物のからだを食ふのをやめました。」宮沢賢治の作品には、生きるために他の命を食べなければならぬことの「かなしみ」が描かれています。本書は、ベジタリアンである著者が、賢治の菜食生活からなる生き方や考え方に焦点を当て、賢治の作品を考察した本です。命あるものへの優しさから、ベジタリアンになった賢治。そして、命を奪うのではなく、自らの手で野菜を生み出すことにより、農業の発展に貢献した賢治。賢治が描き出した理想郷とは?菜食思想という視点から、宮沢賢治を見つめてみませんか? ※[ ]内は資料の請求記号です 【4ページ】 〈こんな人、こんなこと、こんなところ⑫〉矢指ヶ浦(やさしがうら)と源頼朝(みなもとのよりとも)) {図} 『六十余州名所図会 上総 矢さしか浦 通名九十九里』(国立国会図書館デジタルコレクション) {図終わり} 千葉県立東部図書館から車で5分ほどの場所に、「矢指ヶ浦」という名の海岸があります。普段から多くのサーファーに愛され、夏になると海水浴場としても賑わいます。 この矢指ヶ浦という名称、起源を辿ってみると、あの「源頼朝」の名前が登場します。 治承4(1180)年8月、石橋山の戦いで敗北を喫した頼朝は安房国の猟島(鋸南町)に上陸します。安房国を制圧後、一気に北上すると、上総・下総をも席巻し、わずか1か月ほどで房総三国を支配します。やがて、鎌倉に渡った頼朝は鎌倉幕府を成立させました。このとき、頼朝の滞在期間はわすが1か月ほどだったにも関わらず、県内各地には今もなお数多くの頼朝伝説が残されています。 そして、様々な伝説の中には、矢指ヶ浦も登場します。「頼朝が1里ずつ矢を放って距離を測らせたら99本だったので、九十九里浜と呼んだ」「1里ずつ矢を放ったら99本目が矢指ヶ浦海岸だった」「太東岬(いすみ市)から北上しながら計測し、99本目は刑部岬(旭市)だった」 「奥州藤原氏の征討の帰りに刑部岬を起点に南下していき、太東岬まで計測した」など。また、『六十余州名所図会』(嘉永6(1853)年 歌川広重)にも矢指ヶ浦が「矢さしか浦」の名で登場します。現在の横芝光町あたりから旭市方面を描いたように見えるこの作品の題名が「上総 矢さしか浦 通名 九十九里」であることから、どうやら、頼朝伝説で語られている「矢指ヶ浦」は、現在の矢指ヶ浦海岸(旭市)のことを指しているのではなく、太東岬から刑部岬まで続く全長約66kmの九十九里浜の「本名」だったようです。 参考資料 ※【 】内は所蔵館と請求記号 *『広重の諸国六十余州旅景色 大日本国細図・名所図会で巡る 古地図ライブラリー 12』(森山 悦乃 作品解説)【東部7218/105】 *『広重六十余州名所図会 プルヴェラー・コレクション』(安藤 広重 画)【西部 7218/60】 *『あなたの知らない千葉県の歴史 』(山本 博文 監修)【東部 C20/24】 *『いすみの民 話 』(いすみ市民話集編集委員会)【中央 J388/イス】 *『房総昔話散歩』(高橋 在久 著 )【西部 C3880/5】 *『千葉地名の由来を歩く ベスト新書 535 』(谷川 彰英 著)【東部 C2902/9】 編集長の独り言 いよいよ読書週間。県内各地でも読書にまつわるイベントを様々な図書館が行っています。東部図書館でも県立中央博物館や旭市図書館とも連携して千葉県生誕150年記念展示を行っています。ぜひご覧ください。   編集・発行:千葉県立東部図書館 〒289-2521 千葉県旭市ハの349 TEL 0479-62-7070 FAX 0479-62-7466 以上で知識は旅をする 千葉県立東部図書館だより 通号78号 2023年10月発行 テキスト版を終わります。