知識は旅をする 千葉県立東部図書館だより 通号75号 2022年10月発行 テキスト版 【1ページ】   {図} 『浅倉一代記浅倉当吾通天橋直訴の図』豊国画 「菜の花ライブラリー」千葉県デジタルアーカイブ {図終わり} ▼ ガラス展示コーナーのご案内 テーマ:「明治~文明開化の時代~」 展示期間:10月28日~1月19日  明治時代は、蒸気機関車、洋風建築、洋服、洋食などの西洋の文化が日本に伝わり、これまでの生活様式が大きく変化した時代です。ガラス展示コーナーでは「文明開化」に焦点を当てて、当時の風俗や文化に関する資料を展示します。  明治時代を生きた人々の生活に触れてみてください。 ▼ 資料展示コーナーのご案内 テーマ:「感染症と文学」 展示期間:10月28日~12月15日  古代より脅威をもたらしてきた感染症は、数多くの文学にも描かれています。人々がどのように感染症に向き合ってきたのか、コロナ禍の今に役立つヒントが見つかるかもしれません。  この機会に、世界的に大流行した感染症や架空のウイルスを題材にした文学作品をお手にとってみませんか。 ▼ 利用者アンケートにご協力ください  今年も読書週間(10月27日~11月9日)にアンケートを実施します。今後の業務の参考にさせていただきますので、ご協力をお願い致します。  アンケートの集計結果は「知識は旅をする第76号」(2月発行予定)に掲載します。なお、図書館内の壁面にも掲示しますので、ご覧ください。 ▼ 年末年始休館のお知らせ  12月19日(木)から1月4日(水)まで休館します。休館中でも資料の返却ができますので、東部図書館正面入口、左側のブックポストをご利用ください。 千葉県立図書館Twitterはこちら{QRコード} 【2ページ】 令和4年度はつらつライフ講座報告 テーマ「認知症を知る」 ~予防から介護まで認知症サポーター養成講座~ 令和4年9月10日(土) 講師:旭市中央地域包括支援センター 社会福祉士 田中みのり氏 デイサービスふくろう管理者 生活相談員 鈴木久美子氏  旭市高齢者福祉課にご協力をいただき、千葉県立東部図書館として、3年ぶりの「はつらつライフ講座」を開催しました。誠にありがたいことに、定員いっぱいのお申込みをいただきました。ご家族での参加も多く、熱心に聞き入られていました。  講演では、認知症の予防方法、自身や家族が認知症になった際の相談窓口、利用できるサービスなどを中心に、正しい知識や認知症の人への対応方法等をわかりやすく解説していただきました。  前半の田中氏による講演では、旭市の認知症と介護保険の現状や、介護保険の仕組み、認知症の方と接する際の心構えなどについて、ビデオ上映を交えながらご説明いただきました。後半の鈴木氏からは、脳の活性化に繫がる体操やワークシート、質疑応答を通して、認知症の方への対応を参加形式で学ぶことができました。正しい知識を持ち、認知症の方々を支援するという姿勢が重要であることを再認識することができる貴重な機会となりました。  講座と合わせて認知症への理解を深めていただくために、シニア世代の方の暮らしに役立つ情報を提供している「はつらつライフなび」コーナーにて、認知症に関する本の展示を行いました。また、当館作成のパスファインダー(調べ方案内)「認知症について調べる」をご紹介しました。  アンケートでは「運動や質問などのコーナーもあり、充実した講座でした」、「話し方がゆっくりとしていて聞き取りやすく、理解しやすかった」などの感想を頂き、多くの方にご満足いただける内容となりました。 {写真} {写真の説明}講座の様子、スクリーンに講師が映し出されている{写真の説明終わり} {写真終わり} {写真} ▲はつらつライフなびミニ展示「認知症を知る」 {写真の説明}認知症に関する図書の展示の様子{写真の説明終わり} {写真終わり} 【3ページ】 図書館ぶらり散歩(55) ノーベル賞 11月27日はノーベル賞制定記念日。関連する本からおすすめ本を紹介します! [ ]内は資料の請求記号です。 『ノーベル賞の真実 いま明かされる選考の裏面史』 E.ノルビー著 東京化学同人社 2018年 [4902/29]  ノーベル生理学・医学賞委員会の常任および臨時委員を約20年間勤めた著者が、ノーベル生理学・医学賞に焦点を絞り1960年代を中心に受賞者の履歴や当時の時代背景、受賞者の研究が科学の発展にどのように寄与したのかについて、ノーベル文学館資料などを中心に調査し、書かれた資料です。  ノーベル賞の選考過程がよく分かるだけでなく、科学史としても興味深く書かれています。 『ゴルバチョフ 上・下』 ウィリアム・トーブマン著 白水社 2019年 [2893/コミ 5/1・2]  1990年にノーベル平和賞を受賞したミハイル・ゴルバチョフはロシアの民主主義の基礎を築き、中距離核戦力全廃条約をアメリカと締結し、冷戦を終結させる等、世界の平和に尽力した人物です。  この本は、過去に全米批評家協会賞を受賞したアメリカの政治・歴史学者によって書かれた、ゴルバチョフソ連元大統領の伝記です。人物の表情や場の空気が詳細に書かれていて、まるで歴史の一場面にいるか のような臨場感を味わえます。  世界の平和が求められている現在、一読してみるのも良いかもしれません。 『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルーノーベル文学賞受賞記念講演』 カズオ・イシグロ著 早川書房 2018年 [93027/イカ 6]  2017年にノーベル文学賞を受賞した著者の受賞記念講演を、英文と日本語訳で収録した本です。  文学を志した日系人の若者が、イギリスの片田舎の屋根裏部屋で作家活動をスタートさせてからノーベル賞受賞に至るまでを、ユーモラスに、やさしく分かりやすい言葉で回想していきます。音楽から得たインスピレーションや、著者の考える文学の未来について、文中には人間性が滲んだ言葉が散りばめられています。  県立図書館に他の著作も多く所蔵しています。手に取ってみてはいかがでしょうか。 『これはあなたのもの 1943-ウクライナ』 ロアルド・ホフマン作 アートデイズ 2017年 [9327/ホロ 1]  1981年に化学者の福井謙一氏と共にノーベル化学賞を受賞した著者は、ポーランド生まれのユダヤ人です。第二次世界大戦期の不安定な情勢の中で、差別と迫害から逃れるために多くの不自由を味わった彼の幼少期をベースとし、一人の母親の視点で展開される戯曲は、彼と彼の家族が体験した過酷な日々と生き残った奇跡をまざまざと感じさせます。  多くの人たちの熱意が注がれて形を成したこの1冊、ぜひ手にとってみてください。 【4ページ】 〈こんな人、こんなこと、こんなところ⑩〉 征夷大将軍たちの香取神宮 {写真} 総門に至る大鳥居 {写真終わり}  「征夷大将軍」の呼称は幕府の統括者の称号として知られますが始まりは文字どおり「夷(=エミシ、中央政権に従わない人々)を征する軍を将いる」官職でした。その北伐に向かう武人たちの崇敬を集め続けていたのが香取神宮です。エミシ討伐の最前線に立地し戦いと刀剣の神・経津主大神《ふつぬしのおおかみ》を祀る香取神宮は、国家鎮護の武の象徴として強い存在感を放っていたのです。あの源頼朝や足利尊氏らも拠り所としたほどでした。 {写真} 香取神宮のことならなんでもご存じの権禰宜・曽川昌大さん。奥深いお話をたくさん聞かせて下さいました。 {写真終わり}  香取神宮に伝わる古文書のひとつである、治承5(1181)年の「源頼朝寄進状」(下掲)を見てみましょう。頼朝の直筆で、下福田(現在の香取市福田地区)を香取神宮に寄進する旨がしたためられています。ご案内くださった権禰宜・曽川さんのお話によると、土地の寄進とはそこに住む民とその生産物を将来にわたって神に献上することであり、これには、信仰を示して加護を得ようという宗教的な意義はもちろん、香取神宮の祭祀に関わっていることを内外に示して権威を高める政治的な効果があったそうです。平安時代にまとめられた法令の細目集『延喜式』において「神宮」と称されている神社は伊勢・香取・鹿島の三社のみであり、伊勢神宮が皇室と切り離すことのできない唯一無二の神社ならば、香取・鹿島は歴代の朝廷が「日本」という国家を形成していった過程に深く関わる特別な神社でした。国家を担う歴代幕府の将軍が崇め奉ったのも道理というものです。  足利尊氏も観応3(1352)年に、下総国戸頭郷(現在の茨城県取手市戸頭地区)を寄進しています。  宝物館では「源頼朝寄進状」の複製のほか、徳川家康の奉納した長刀、伊達政宗の奉納した遊び心ある盃などを見ることができます。また、境内には、頼朝の5代前の先祖である源頼義が願を掛けたところ言葉のとおり三つ又に割れたという「三本杉」や、征夷大将軍・坂上田村麻呂が武運長久の祈願の折、弓を立て掛けた「弓掛杉」の伝承が残っています。  千五百年の昔から武人たちを守護し鼓舞してきた香取神宮の清澄な空気を味わいに、この秋、足を運んでみませんか。 {写真} 香取古文書源頼朝寄進状(香取神宮蔵) {釈文、読み下し文、現代語訳あり} {釈文} (花押) 奉寄 香取社御領  在下総國下福田郷 右爲心願成就 所奉寄如件  治承五年十月 日源頼朝敬白 {読み下し文} 寄せ奉る 香取社御領  在下総國 下福田郷 右 心願成就の為 奉寄する所件の如し {現代語訳} 寄進申し上げます香取神宮ご神領として下総国の下福田という郷右を、心願成就のため、記載のとおり寄進申し上げます。 {写真終わり} 香取神宮:千葉県香取市香取1697-1 JR佐原駅よりバス・車で10分(4km)、香取駅より車で5分(2km) 県立図書館では香取神宮に関する資料を所蔵しています。〔 〕{亀甲括弧}は所蔵館と請求記号です。 *『香取神宮 神に奉げた美』(千葉県立美術館編)〔東部 C175/12〕 *『佐原市史』(佐原市役所編纂)〔東部 C234/J01-4〕 *『千葉県の歴史 資料編中世 2』『同 別編民俗 1』(千葉県史料研究財団編)〔東部 C20/7/2-7 東部 C20/7/3-1〕 *菜の花ライブラリー“香取神宮”で検索(インターネット千葉県立図書館ウェブサイトよりアクセス) ■県立図書館の資料は、市町立村図書館などを通じて利用することもできます。お近くの図書館、公民館図書室等の読書施設にご相談ください。 ■県立図書館では、千葉県に関する資料を収集しています。グループ・職場などで資料を発行されたときには、情報をお寄せください。 編集長の独り言 ■秋と言えば、芸術の秋、スポーツの秋に食欲の秋と色々な秋があります。本号でご紹介した本で秋の夜長を過ごしていただい たり、香取神宮や近くの神社、史跡を訪れてみたり、色々な秋を過ごしていただけると幸いです。 ■今から3年前の令和元年秋、房総半島台風と名付けられた台風15号が千葉県を直撃して甚大な被害をもたらしました。今年もいくつもの台風が発生していますので、くれぐれもご用心を。 編集・発行:千葉県立東部図書館 〒289-2521 千葉県旭市ハの349 TEL 0479-62-7070 FAX 0479-62-7466 URL:https://www.library.pref.chiba.lg.jp/ PC・スマホ{QRコード} 携帯電話{QRコード} 以上で知識は旅をする 千葉県立東部図書館だより 通号75号 2022年10月発行 テキスト版を終わります。