初心者のための判例の調べ方
目次
1 判例とは
判例とは,裁判の先例となる過去の判決のことを言います。裁判では法解釈などで過去の判決を参考にすることもあるため,判例は重要な意味を持つことになります。
※すべての判決が判例になるわけではありません。
2 キーワード
図書を探すときに便利なキーワードです。
「判例」,「判例集」,「判例解説」と,法律名(例:「民法」,「刑法」,「刑事訴訟法」)や,テーマ(例:「行政」,「交通事故」,「医療」,「建築」)を掛け合わせることで,求める分野の判例が掲載されている資料を探すことができます。
千葉県立図書館ホームページの「図書・雑誌・視聴覚資料検索」でキーワード(2つあるときは2か所)を「全項目」あるいは「件名」とし,検索値にキーワードを入れて検索します。
3 最高裁判所の判例を探す
<こんな資料があります>※所蔵情報の「+」は継続刊行中を表します。
誌 名 | 出版情報 | 所蔵情報 |
---|---|---|
最高裁判所判例集(民事判例集・刑事判例集) |
最高裁判所判例調査会 不定期 |
中 S22.11+ (欠あり) |
最高裁判所の重要な判例を掲載。最高裁判所民事判例集(民事事件・行政事件)と最高裁判所刑事判例集(刑事事件)の両方が掲載されています。毎年発行される索引で,法条,事件番号,裁判年月日からその年の判例を探すことができます。略称はそれぞれ「民集」,「刑集」。 | ||
裁判所時報 | 最高裁判所事務総局 半月刊 |
中 H5.4+ (欠あり) |
最高裁判所の判例を速報しているほか,判例要旨を掲載しています。略称は「裁時」。 | ||
書 名 | 出版情報 | 所蔵情報 |
最高裁判所裁判集<民事>要旨集 |
最高裁判所判例調査会 |
中 32409/5,13,14,16~18 |
最高裁判所裁判集<刑事>主要裁判例要旨集 |
最高裁判所判例調査会 |
中 32609/9,22 |
最高裁判所の主要な判例を掲載。民事は民法・民事関連法・民事訴訟法・商法・社会経済法・行政法の各編につき昭和37年から平成8年ごろまで,刑事は刑法・刑事訴訟法の各編につき昭和22年から平成9年ごろまでが登載されています。詳しい終期はそれぞれの資料の書誌情報を確認してください。 |
4 大審院の判例を探す
書 名 | 出版情報 | 所蔵情報 |
---|---|---|
大審院民事判例集 1~25 |
最高裁判所編 法曹会 1951~1954 |
中 324/D27 |
大審院刑事判例集 1~26 |
最高裁判所編 法曹会 1951~1954 |
中 326/D27 |
大審院の重要な判例を掲載。民事事件と刑事事件で,冊子が分かれています。略称はそれぞれ「民集」,「刑集」。 | ||
大審院民事判決録 1~10 |
新日本法規出版 1972 |
中 324/D27 |
大審院刑事判決録 1~12 |
新日本法規出版 1969~1970 |
中 326/D27 |
大審院の判決中,参考となるものを判決日順に収録しています。略称はそれぞれ「民録」,「刑録」。 | ||
明治前期大審院民事判決録 1~13-1 |
明治前期大審院判決録刊行会編 三和書房 1957~1976 |
中 324/D27 |
明治前期大審院刑事判決録 1~29 |
文生書院 1987~1989 |
中 326/D27 |
明治21年から27年分は刊行されていません。また,刑事事件については,明治18年分も掲載がありません。 |
5 下級裁判所の判例を探す
誌 名 | 出版情報 | 所蔵情報 |
---|---|---|
高等裁判所判例集 |
判例調査会 不定期 |
中 S23.12~H14.8 (欠あり) |
各高等裁判所の判例を登載。略称はそれぞれ「高裁民集」,「高裁刑集」。平成14年休刊。 | ||
下級裁判所民事裁判例集 |
法曹会 不定期 |
中 S25.1~S59.8 (欠あり) |
下級裁判所刑事裁判例集 |
法務省 月刊 |
中 S34.1~S43.12(欠あり) |
下級裁判所の判決から選択して収録したもの。民事は昭和62年(第35巻5-8号)で終刊。略称はそれぞれ「下級民集」,「下級刑集」。 | ||
刑事裁判月報(下級刑集の改題) | 法曹会 月刊 |
中 S44.1~S61.6 (欠あり) |
下級裁判所刑事裁判例集の改題。昭和61年(第18巻5・6号)終刊。略称は「刑裁月報」。 |
6 データベースで探す
千葉県立図書館内で利用できるものと,インターネット公開されているものがあります。
<館内で利用できるデータベース>
●D1-Law.com
「判例体系」では全法分野の判例本文,判例要旨,判例書誌を検索できます。フリーワード,事項,法令,裁判年月日,裁判所,事件番号等から検索します。
「法律判例文献情報」では法律や判例に関する図書や雑誌記事・論文等の書誌情報を検索できます。
<インターネット公開されているデータベース>
●裁判所 裁判例検索 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/search1
最高裁判所判例集,高等裁判所判例集,下級裁判所判例集,行政事件裁判例集,労働事件裁判例集,知的財産裁判例集から検索できます。 ※すべての判例が掲載されているわけではありません。
●国立国会図書館オンライン 雑誌記事索引の検索 https://ndlonline.ndl.go.jp/
タイトルに判例の事項,事件名,法令名などを入れて検索すると,採録されている判例雑誌について,該当記事を調べることができます。
●最高裁判所図書館 https://www.courts.go.jp/saikosai/tosyokan/index.html
蔵書検索では最高裁判所所蔵の図書や雑誌の検索ができます。平成17年1月以降に出版された図書や雑誌は,法条文,事件番号,裁判年月日で検索できます。
7 判例掲載誌について(略語表記の一覧)
判例集や法律関係の雑誌を出典として掲載する場合,略語で表記することが慣例となっています。こうした文献略語について調べることのできる代表的なwebページや掲載雑誌をご紹介します。分かっている略語から正式な掲載雑誌名などが特定できます。
【例1】 最大 判 平成20・9・10 民集 62巻8号 2029頁
ア イ ウ エ
ア=最高裁判所大法廷(※), イ=判決, ウ=平成20年9月10日,エ=掲載誌「最高裁判所判例集 民事判例集」
※アが「最」なら「最高裁判所小法廷」,「大」なら「大審院」を表します。
【例2】 名古屋地裁 平18 (ワ)第503号 平21.2.24判決 判タ 1301号 140頁
オ カ キ ク
オ=名古屋地方裁判所, カ=裁判所に訴訟が提起された年(平成18年), キ=事件記録符号(事件の種類)・事件受付番号,ク=掲載誌「判例タイムズ」
<代表的なwebページや掲載雑誌>
●法律文献等の出典の表示方法 2014年版 https://www.houkyouikushien.or.jp/katsudo/pdf/houritubunken2014a.pdf NPO法人法教育支援センター(https://www.houkyouikushien.or.jp/index.html)より,法律関係の雑誌・書籍等の出版に携わる編集者で組織する法律編集者懇話会が作成したものがPDF公開されています。
●日本の判例集・法律文献略語一覧 https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/hanrei/hanrei.html
戦前・戦後の判例集,判例雑誌,主要法律雑誌,法律関係大学紀要が種別ごとに分かりやすくまとめられています。 (注)リンク先の所蔵の有無は,福島大学附属図書館の所蔵状況です。
誌 名 | 出版情報 | 所蔵情報 |
---|---|---|
法律時報 |
日本評論社 月刊 |
中 S4.12+ |
雑誌は月刊ですが,文献略語表の掲載は年に1回で,近年は12月号に掲載されているほか,日本評論社法律時報編集部ブログ (https://www.nippyo.co.jp/blogjihou/) で最新版を見ることができます。刊行頻度も示されていて便利です。 |
||
【例】「法学教室における判例集・法令名等の略語例」(『法学教室』2019年10月号 通巻469号)(西部図書館所蔵)p7
8 もっと知りたい方へ~判例の読み方・調べ方
<こんな資料があります>
書 名 | 出版情報 | 所蔵情報 |
---|---|---|
法情報の調べ方入門 法の森のみちしるべ |
ロー・ライブラリアン研究会編 日本図書館協会 2017 | 中 3207/24 |
法律を初めて学ぶ図書館員向けに書かれたものですが、一般の方にもおすすめの本です。図書館での法情報の探し方がわかります。 | ||
リーガル・リサーチ 第5版 | いしかわまりこ[ほか]著 日本評論社 2016 ※西所蔵:3版(2008) |
中 3207/12 |
判例の基本的知識,判例が載っている具体的な判例集,雑誌,データベース,判例の実際の探し方,判例の解釈や評釈の調べ方などが,わかりやすく解説されています。 | ||
やさしい法律時報の調べ方・引用の仕方 | 小林成光[ほか]著 文眞堂 2010 | 中 3207/18 |
法律情報の調べ方および法文献の引用の仕方についてわかりやすく解説した入門書。日本の法律情報のほか,イギリス法、アメリカ法、ドイツ法についての解説もあります。 | ||
判例とその読み方 3訂版 | 中野次雄編集 有斐閣 2009 | 中 32098/5 |
判例とはどういうもので,どう作られ,実務をどう拘束するか。各分野の実際の判例をあげて読み方を示し,判例が果たす機能などについて解説してあります。 |
9 見つからなかったとあきらめる前に
ご紹介した以外にも多くの判例集が存在します。県立図書館が所蔵していない資料については,国立国会図書館や最高裁判所図書館が所蔵している可能性があります。探す際には,以下のサイトが参考になります。 国立国会図書館については満18歳以上の方が,また最高裁判所図書館については学術研究を目的とする18歳以上の方がご利用になることができます。詳しくは,各図書館のホームページでご確認ください。
●国立国会図書館「リサーチ・ナビ」 https://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/
国立国会図書館職員が調べものに有用であると判断した資料,ウェブサイト,データベース,関係機関情報をテーマごとに紹介しているサイトです。キーワードに「判例」,「判例資料」や「判例検索」と入れて検索します。「日本-判例資料」,「官報・法令・判例検索(日本)」等,判例の調べ方が見つかります。
<インターネット最終アクセス:2022年3月3日>
【参考文献】 『やさしい法律情報の調べ方・引用の仕方』(小林成光[ほか]著 文眞堂 2010)
【ご利用にあたって】 図書館では,個別の事案に関する法律判断や法律相談はお受けできませんので,弁護士等の専門家にご相談ください。
判例を調べるときに手がかりとなる主な情報を,初心者向きにやさしくご案内します。【2022年3月30日改訂】